百千ギャルゲーレビュー

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百人のギャルゲーヒロインを千文字(ぐらい)でレビューします

藤崎詩織/マリオネット/日向照美 /桜井陽子/山代有希

藤崎詩織

藤崎詩織。
ときめきメモリアルをプレイしたことはない方でも、その名前は知っているのではないだろうか。
私もそのクチだった。きっかけはインターネットで見た一枚の画像。下校の誘いを断る高飛車な女という印象を抱いた。

しかし、実際にゲームをプレイしてみると、印象は逆転した。

ゲームは高校の入学式から始まるのだが、藤崎詩織の方からフレンドリーに話しかけてくれる。
彼女は、常にトゲトゲしているわけではなかった。「貴方とは話すのも嫌」と罵倒される覚悟を抱いていた私からしてみれば、拍子抜けする始まりであった。
むしろ私が想像していたより、彼女と主人公は近い距離にあった。
二人は幼馴染みで、お互いの家は自室の窓から見える距離にある。
そして幼馴染みなだけあって、藤崎詩織の家の電話番号を知っているのだ。

電話をかければデートの約束もできる。
場所は近所の公園や動物園といったベタな場所から、プラネタリウムやコンサートといったお金のかかる場所まで。彼女からすればまるで興味が無いであろうプロレス観戦まで付き合ってくれるのだ。
季節の行事も充実している。夏はプールや海で水着姿を見せてくれるし、冬は元旦から初詣に行ける。
体育祭では二人三脚でペアを組み、修学旅行は二人で異国の地を巡る。雨が降れば相合い傘で下校することもある。
容姿のパラメータを育てれば「カッコ良くなってきたね」、運動の場合は「たくましくなってきたね」と声をかけてくれる。主人公の細かい変化にも気がつくのだ。

彼氏でもなんでもない男に対して、こんなに気配りのできる女性がいるだろうか。
彼女に対して高飛車などと思い込んでいた自分が恥ずかしくなった。いやはや、インターネットの情報操作は恐ろしい。

インターネットが身近なものになった現代、改めてネットリテラシーというものを意識する必要がある。
ネットリテラシーとは、インターネットの情報や事象を正しく理解し、それを適切に判断、運用できる能力を意味する(千葉県警のHPから抜粋)。
例えば「煽り運転されました!」という動画を見たとき。反射的に加害者を叩くのではなく、「被害者が煽られるような行為をしていたのでは?」と一歩立ち止まって考えてみる。
ウィキペディアに書いてあることを全て鵜呑みにするのではなく、複数の文献に目を通してみる。
藤崎詩織の人間性を画像一枚で判断するのではなく、実際にときめきメモリアルをプレイしてみる。そして藤崎詩織の魅力を体感すべきである。

なんだか後半から話が反れてしまったが、それは文字数稼ぎのためである。千文字ぐらいと思って臨んだが、ご覧の有り様だ。
恐らく次回以降も話の展開が右往左往するだろうが、そこも含めて楽しんでいただければ。



マリオネット

このゲームの主人公は社会人である。
朝六時に起床。
八時半から十六時まで会社で働く。
その後二十四時まで自由時間を過ごす。
土日祝日は仕事が休み。

超ホワイト企業で働いている。
そこはさておき、一日のルーティーンは一般的な社会人と大差ないのではないだろうか。
日中は職場にいて、帰宅後の僅かな時間を趣味に当てる。

何故ゲームなのに現実と同じタイムラインで生きねばならぬのか。
いやしかし、この世界にはマリオネットがいるのだ。
おはよう、いってらっしゃいから始まり、おかえり、おやすみなさいまで主人公の側にいてくれる。孤独な現実との大きな違いがここだ。
このゲーム、孤独な現実に即したリアリティがあるからこそ、マリオネットという架空の存在が際立つ。
日々の孤独な暮らしを支えてくれる彼女は、性格も天真爛漫としている。どじっ子属性も付加されていて、言葉を誤用したり、料理が下手だったり。
少しキャラに古臭さを感じるが、そもそもこのゲームは1999年発売されている。古さを楽しみつつ昔のオタクに思いを馳せよう。

そもそもマリオネットとは、人型のロボット、いわゆるアンドロイドのようなものだ。
主人公はマリオネットと同居しながら、彼女を人間に近付けるための教育を行っていく。その内容はマリオネットとの会話を通じて知識を授けたり、パーツを改造してステータスを強化するというもの。
これらを通じてマリオネットはできることが増えたり、同じ話題でも会話の内容が変化したりなど、彼女の成長を実感できるという流れになっている。

休日にはマリオネットと一緒に、海や遊園地などに遊びに行ける。
また、マリオネットだけでアルバイトをさせることもできる。この際プレイヤーは一切介入できないため、成功を祈ることしかできない。

そしてこのマリオネットは主人公と共に過ごしているうちに、徐々に人間性を獲得してくる。
するとどうなるかというと、主人公に対して恋愛感情を抱くようになるのだ。ラブレターを綴り、手を繋ぎ、やがて唇を重ねる。二人で過ごす何気ない日常を、「新婚さんみたいですね」とポツリ例える。
独りぼっちの生活は終わりを告げ、二人で支え合う新しい人生が始まるのだ。

ここで俺は一つ疑問を抱いた。
人間性の向上の先が異性を慕う感情だとするならば、画面の前で疑似恋愛を楽しんでいる俺は人間的に未熟ということだろうか?
だろうか?などとすっとぼけて書いたが、自分でも分かっている。未熟だ。
だがしかし、そんな未熟な人間たちを相手に客商売しているゲーム会社に説教される筋合いは全く持って無い。
未熟上等である。これからも大手を振って疑似恋愛に熱を上げよう。



日向照美

このゲームに登場するキャラクターは落ち着いたデザインの者が多い。
その中で激烈な個性を放っているのが日向照美である。

ピンク髪、ツインテール、低身長。萌え袖はファッションではなく、制服のサイズが合っていないのだろう。
そんなロリータな外見を軸に、彼女には二つのギャップが備えられている。

一つ目、日向照美は僕っ子である。
秋葉原でフィールド効果を得る皆さんにとっては一般常識であり今さら解説する必要もないだろうが、ここで文字数を稼がせていただく。
僕っ子とは文字通り、一人称に「僕」を用いる女性を差す言葉である。キャラクターのボーイッシュな部分や、女性として未成熟な部分を強調する効果がある。
日向照美も例外ではなく、この二種類のキャラクター性は前面に押し出されている。

「楽しいことが大好き」と言う彼女は、前述した外見も相まっておおよそ高校生らしくない姿を見せる。
知り合って間もない頃から、主人公の手を引いて自身が所属する演劇部に連れていく。このように子供じみた行動が多く見られ、クラスメイトや同じ部活に所属する部員も手を焼いているようだ。
ドタバタと校内を動き回るバイタリティは疲れ知らずの幼児を思わせる。
見た目は幼女然としているが、「僕」という男性的な一人称を用いることで、この活動性に説得力を持たせているのだろう。

二つ目、日向照美は年上である。
主人公は高校二年生で、彼女は三年生。数字で見ると一歳だけだが、上下関係に高校生活においては大きい差だということは皆さんの暗い学生生活を思い返していただければ理解できるはずだ。
そんな彼女は、演劇部の部長を務めている。部活動でも持ち前の明るさを振り撒く彼女だが、いざというときは部員たちをまとめあげる力を持っている。部員たちのためなら、自らを犠牲にしてでも行動を起こしてみせる。
普段の学校生活で見る子どもじみた容姿や行動に慣れていると、部活で見せるギャップに驚くだろう。

日向照美。この小さな体の中に、ロリ、僕っ子、先輩、様々な要素が詰まっている。それぞれが複雑に絡み合い、強烈なシナジーを生んでいるのだ。
そして文化祭当日。体育館で演技を披露する彼女の姿を見て、更なる一面を発見するはず。



桜井陽子

桜井陽子は大きめの丸眼鏡をかけて、制服の上から白衣をまとっている。創作物における、理系女子のスタンダードのような見た目をしている。
内面も、常に研究を第一に考えて主人公を実験台として扱うマッドサイエンティストという、どこかで見たことがあるような性格のキャラクターなのである。

外見もテンプレ、内面もテンプレ、そんな彼女のストロングポイントは、自らの性を武器にしている部分である。人体実験のために主人公を篭絡すべく、あの手この手で色仕掛けを施してくるのだ。
その方法は甘い雰囲気を醸し出しながら「目を瞑ってよ……」なんて囁いて素直に応じた主人公の口に自家製の薬物をねじ込んだり、他の部員が見ているにも関わらず自らの身体を主人公に押し当てて従わせようとしたり、初見のテンプレ感からは想像できない積極性である。

見た目が地味なのに、下半身に訴えかけるような手段を取ってくるのが逆にエロい!己の分析から裏打ちされたであろう「結局、男なんてこうすればいいんでしょ?」みたいな考えが透けて見えて、男を手玉に取っているのがエロい!
立ち絵ではイマイチ分からないが、説明書によると登場ヒロインの中では二番目にバストが大きい。ちなみに一位はハーフの子だがこれは血統のドーピングにあたるため(意味不明)、実質一位はこの桜井陽子なのだ。

初代プレイステーション発の一般ゲームであるため色仕掛けの細かい描写は省かれてしまっているのだが着眼すべきはそこではない。自らの研究のために手段を選ばず、文字通り体を張る彼女の姿には驚嘆の念を禁じ得ない。 その研究能力は確かなようで、文化祭では二年をかけて開発したパワードスーツを稼働させる。ステージから客席に向けて実弾を放つ豪胆ぶりである。 そんな彼女だが、告白の手段は遠回しなのだ。「文化祭の発表の反省会をしましょう」なんてもっともらしい提案で主人公を誘い出し、もじもじと想いを語り始める。研究者という役割を降りれば普通の女の子なのである。



山代有希

主人公が街をふらついているとチンピラと肩がぶつかってしまう。「お前のせいで怪我をした」と法外な治療費をふっかけてくる場面で、一人の少女が助太刀に入ってくれる。彼女は数で勝る輩共を軽く蹴散らし、名も名乗らずに去っていってしまうのだった。
これが山代有希との初めての出会いである。

ひょんな人間関係の繋がりから彼女の家庭教師を担当することになるのだが、「勉強は嫌い」「進学できなくてもいい」と真面目な態度は見られない。
しかし運動は得意だと言い、ボクシングも習っている。これは合気道の道場を営む父親への反抗心の表れでもあるようだ。部屋には戦車や戦闘機の写真が飾ってあり、エアガンやプラモデルをプレゼントすると素直に喜ぶ姿を見せてくれる。
ボーイッシュなキャラクターだが、テディベアが好きで裁縫も得意というギャップのある一面も見せてくれる。
また、この年齢特有の拗らせか、はたまた本心か、「人間は嫌いだ」「人間なんか信用できない」なんてねじ曲がった思想をときどき口にする。これが効いている。
ボーイッシュという表のキャラ設定、その裏切りとして備えられた女性的な部分、これだけならそこらの凡百と変わらぬテンプレキャラである。
肉体的な強さという表に対する精神面の弱さ。時折見せる冷めた部分が山代有希というキャラクターを深めているのだ。
そのせいで会話の選択肢が難しい。スポーツの話題で「格闘技好き?」と聞くと「見れば分かるだろ」なんて冷たく突き放されてしまう。正解を見つけるために真剣に彼女に向き合う、まさに格闘技のような緊張感をもたらすのだ。

合格発表の日、大学に合格すると彼女は自らの思いを語ってくれる。

「留年したら、もう一年あんたに家庭教師を頼もうと思ってた。
でも受かっちゃったから、もう会えないんだね……」
勉強が嫌いと言っていた有希が、人間が嫌いと言っていた有希が、実は俺を頼ってくれていたことが明らかになったシーンで泣いてしまった。

「アタシ勉強嫌いだから、もうちょっとだけ教えてほしいな。大学のこととか、それ以外のこととか……」
家庭教師として、大学の先輩として、そして恋人として、俺たちはハッピーエンドを迎えるのだった。


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